第2回レポート

第2回レポート

鈴鹿山脈が恵む湧水と大地で育った石榑茶と宇賀渓の自然に触れ、フレンチシェフのいなべキュイジーヌを味わう

「Eat with nature/いなべの自然とともに食す」第2回は、いなべの春の訪れを感じる自然に満ち溢れた体験となった。2022年4月15日、数日前まで続いた春の暖かな陽気から一変し、雨がパラパラと降る中、始まった。

新芽が輝く春の茶畑

最初の目的地は、岡製茶の茶畑。

到着するころには雨も止み、前日から降り続いた雨が、お茶の新芽を輝かせていた。

新茶は、夏も近づく八十八夜と茶摘みの歌があるが、立春から数えて、88日目、2022年は52日となる。そのため、まだまだ茶摘みには早いが、少しずつ新芽が出始め、茶畑は新芽の緑で鮮やかに彩られていた。

茶畑が広がるいなべ市の石榑(いしぐれ)地区は、寒暖差があり、土質も良く、お茶の生産の好条件が揃っている。この地区で育てられたお茶は「石榑茶」と呼ばれ、茶葉が厚くコクがあり、深い味や香りが楽しめる。

案内は、地元で100年以上続く岡製茶の4代目の岡記善さん。

玉露、かぶせ茶、煎茶、茎茶、煎茶、和紅茶、はあぶ緑茶までさまざまな種類のお茶を、土づくりからこだわり、有機肥料を中心に栽培から製造・仕上げ・販売まで一貫して行っている。

茶の木に囲まれた場所で、お茶の種類や生産方法、自然との付き合い方などを丁寧に説明してくれた。特に春の新茶の収穫までの親葉を育てるところが大事だという。冬の寒い時期も丁寧に育てられたからこそ、緑輝く新芽に出会うことができた。

今回は、特別にお茶の新芽を食べさせてくれた。苦味が口の中に広がった後に、お茶の香りがほんのりと感じる。岡さん曰く、天ぷらにすると絶品らしい。

参加者は思い思いに茶を摘んで、食べたり、天ぷら用に持ち帰ったり。新芽の茶葉を噛み締めながら、岡さんの思いと春の訪れに触れる。

このお茶畑の風景を残していくために、私たちは何ができるだろうか。間も無く、新茶の収穫が始まろうとしている。

お茶工場に現れた茶席

茶畑見学の後は、工場の見学とお茶体験。

工場に入ると、そこはこの日限りのお茶の空間が広がっていた。

先代が用意した火鉢など今でも使われている昔ながらの調度品が並ぶ空間は、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる。

工場に入ると、まずは昔ながらの焙じ機でカリガネと呼ばれるお茶の茎の部分を焙じて見せてくれた。工場内は焙じた香ばしい香りが広がる。

焙じる間、工場内を見学。滅多に見ることのできないお茶の機械。蒸らしから揉みなど1つ1つの工程を丁寧に説明してくれる岡さん。参加者も興味津々。私たちの手元に届くまでにはさまざまな手間がかかっている。今ではペットボトルのお茶が普及し、茶葉自体を見る機会も減っている。茶農家が丁寧に育てた茶葉は、形がしっかりしていて輝いている。

最後は、茶箱で作られたテーブルでのお茶体験。

まずは、玉露を淹れる。岡さんが講師となり、お茶の淹れ方、お湯の温度について説明。お茶も淹れ方ひとつで味や香りも変わってしまう。玉露は低温でゆっくり抽出して、お茶のコクや甘味を楽しむ。

参加者も自分で淹れたお茶をゆっくり味わっていた。二煎目も温度を変えて、味の違いを楽しんだ。

そして、次は先程焙じたばかりのカリガネ茶と自家製のハーブで作ったはあぶ緑茶とともに地元の和菓子屋「八舎」の長命寺桜餅とかりんとう饅頭を味わった。お茶菓子と味わうと更にお茶の美味しさも際立つ。

茶畑の土を使った、土染。

また、今回は、オリジナルの茶布を用意した。この茶布は岡製茶さんの茶畑で採れた土を使った土染。製作していただいたのは、自然染色工房を構える澤山桃子さん。世界最古の染色とも言われる土染。石榑の地で育てられた土にはたくさんの微生物が宿り、綺麗に染め上がった。

春の芽吹きを感じる宇賀渓

岡製茶を後にし、宇賀渓へ。

ここからはトレッキングで魚止滝まで向かう。

案内は、宇賀渓観光協会で観光アドバイザーを務める諸岡良治さん。先日までの温かな気候と前日まで降り注いだ雨で、さまざまな植物が芽吹き、新緑が光輝いている。

最初にこんなものを手に取って見せてくれた。

エビフライ??これはリスが松ぼっくりを食べたカス。こんな発見も山のガイドならでは。

歩きながら、宇賀渓の植物についていろいろと話をしてくれる諸岡さん。前日に山に入ったら、2時間のところ、4時間半程かかったくらい、伝えたいことは盛りだくさんだったそう。それもそのはず、宇賀渓は三重県と滋賀県の県境に位置する鈴鹿国定公園で太平洋と日本海に挟まれた自然豊かな場所なのだ。環境省が制定する、「生物多様性保全上重要な里地里山」にも選ばれた次世代に残すべき里地里山である。

そんな宇賀渓の奥へと歩を進めていく。

30分程歩くと、舗装された道が終わり、滝へと続く道が現れる。

川にかかる吊り橋を恐る恐る渡っていくと、遠くの方から滝の音が聞こえる。参加者も少し疲れた様子だが、川のせせらぎと木々の揺れる音、鳥の囀りが心地良く、そんな疲れもあっという間に吹き消してくれる。

途中、炭焼き窯の跡も教えてくれた。ここでは昔、炭焼の文化があり、山のいたるところに炭焼の跡が残る。

マイナスイオンを浴びる、心地よい空間

そして、ついに目的地の魚止滝に到着。

名前の通り、魚が止まるほど勢いよく流れる滝からは、風に揺られた水しぶきを感じ、心地よい気持ちにさせてくれる。参加者は写真を取ったり、ぼーっと滝を眺めたり、思い思いに滝のまわりで過ごした。

滝を後にして、食事が待つ「竜のコバ」へ向かう。

1日限定のレストランで味わう至福のひととき

最後は、「竜のコバ」でのディナー。

料理は「ビストロ シェ・スギ」の杉本シェフのフレンチ。この日のためにいなべの食材を中心に構成されたメニューが用意されていた。

まずは、自家製の赤かぶを使った温かなスープが振る舞われた。トレッキングで程よく疲れた体に染みわたる。スープを飲んでホッとしたのか、参加者間のコミュニケーションが生まれる。

スープを味わった後は、竜のコバの中に特別な空間が用意されていた。

薪や丸太で作られた直径2mを超える大きなテーブルの上には、3種類の前菜が並べられていた。地元の秀真ふるさと農園のフィンガーライムを添えた沖シジミのワイン蒸しやいなべで採れたたんぽぽのジェノベーゼを使った鮑ボイル、HATAKEYAの人参のラペなど地元食材がふんだんに使われている。

開催した4月中旬は、端境期と呼ばれる冬野菜が終わり、初夏の野菜に向けてタネを

植える時期。当初は杉本シェフもどうしようと悩まれていた。しかし、当日を迎えるとそんな悩みが嘘かのように、さまざまな彩溢れるメニューが作られていた。このツアーのコンセプトでもある「その瞬間にしか味わうことのできない食」を見事に再現した料理になった。

春ならではの苦みを意識した料理構成にしたというシェフの料理は、どれも春を感じされる演出がされていた。

石榑茶を使ったオリジナルカクテル

そして、今回は料理だけでなく、ペアリングのカクテルも用意された。

岡製茶のお茶を使ったオリジナルのカクテル。

このレシピを開発したのは、いろいろな縁でつながった今村キャメロン明優美さん。茶のブレンドや茶を用いた酒、嗜好品にまつわる愉しみを茶と共に表現する屋号「茶嗜八」を構え、東京で活躍されている。前菜とデザート用に計3種のカクテル・ブレンドティーを作ってくれた(キャメロンさんやカクテルの詳細はこちら

初めて飲む味わいや香りに参加者も楽しんでいた。お茶そのものを味わうお茶体験とは違って、お茶・ハーブ・お酒など、それぞれの良さを最大限引き出した一品となった。

肉の前菜では、第1回で協力いただいた鈴原山肉店の鹿のコンソメを使った料理も添えられた。あえて鹿肉そのものではなく、コンソメとして作るところがシェフならではのフレンチ。

三重いなべ牛のステーキに舌鼓

そして、メインには、三重いなべ牛のステーキが振る舞われた。宇賀渓の麓に広がる清らかな水と気候で育てられた三重いなべ牛を知る人は少ない。知名度は無くても、最上位のA5ランクに格付けされる肉質。今回は、いなべ牛の生産者である清水一史さんにもお越しいただき、三重いなべ牛のこだわりなどを熱く語っていただいた。他の黒毛和牛と比べ、油の融点が低く、口の中で油がスーッと溶け、肉の旨みをしっかり感じられる。

三重いなべ牛を育てる生産者の一人、清水畜産の清水一史さん

コースの最後は、地元の多胡農園のいちごとお茶を使ったグラスデザートとオリジナルブレンドティー「sakura」。

春の訪れを感じる締めくくりとなる組み合わせとなった。

最後にもてなした3人から一言ずついただいた。

岡さんからは「今回の体験をきっかけにお茶を愉しんでいただけたら嬉しい。」お茶の世界はまだまだ奥が深い。参加者だけでなく、もてなす側もお茶の新たな発見や可能性を感じる機会となった。

諸岡さんからは「本日体験いただいた宇賀渓はまだごく一部。ぜひ改めて宇賀渓に来て、自然を体感いただきたい。」

杉本シェフは「今回のメニューは、新たな発見が多く、山菜などこの季節ならではの食材を使って楽しむことができた。皆さんも愉しんでいただけたのではないかなと感じている、ありがとうございました」

こうして、Eat with nature の第2回の幕が下りた。

前回に続き、お客さまとのつながりだけではなく、いなべで活躍する人たちも繋がった。人を変え、場所を変え、季節を変えて続くこのプロジェクト。次回はどんな顔ぶれになるのか。

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Green Creative Inabe

Eat with nature